【書評】『夜と霧』強制収容所、実体験から考える。「生きるとは?」

この本は決して面白い本ではありません。

本当に読んでいて、悲しい気持ちになります。

なぜなら収容所の中で、ゴミのように扱われ、悪夢よりも苦痛である現実を耐え抜く作者の様子が鮮明に描かれているからです。

そんな極限の環境の中で、常に死と隣り合わせだったからこそ、この本で描かれる精神のあり方は、今この時代でも通じる普遍的なものでした。

負の側面も学んでいかなくてはならないと思わされる本でした。

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〜こんな人にオススメ〜

  • 生きる意味が少しわからなくなっている人
  • 哲学的な発想が好きな人
  • 人類の負の歴史も学びたいと思っている人
  • 平和を願っている人

    夜と霧あらすじ

    この本は第二次世界大戦中の強制収容所の体験を心理学者であるV・E・フランクルの体験記です。

    構成は大きく3パートに分かれています。

    最初は収容される前の選別から収容直後の様子を描いた「収容」パート。
    そして一番事細かに言述されている「収容所生活」
    最後に「収容所から解放されて」の3パートです。

    彼が強制収容所での思い・考え・真理を想像を絶する日々の中で変えていき、気づいていく様子を描いています。

    収容

    夜になって、私たちは人差し指の動きの意味を知った。それは最初の淘汰だった。生か死かのの決定だったのだ。それは私たちの移送団のほとんど、およそ九十%にとっては死の宣告だった。

    やけくそのユーモアだ!私たちはもうみっともない裸の体のほかには失うものは何もないことを知っていた。早くもシャワーの水がふりそそいでいるあいだに、程度の差こそあれ冗談を、とにかく自分では冗談のつもりのことを言いあい、まずは自分自身を、ひいてはおたがいを笑い飛ばそうと躍起になった。

    人間はなにごとにも慣れる存在だ、と定義したドストエフスキーがいかに正しかったか思わずにはいられない。人間はなにごとにも慣れることができるというが、それはほんとうかほんとうならそれはどこまで可能か、と訊かれたら、わたしは、ほんとうだ、どこまでも可能だ、と答えるだろう。

     このパートでは生と死を選別する振り分けをくぐり抜け、収容所に入ったものの、未来への希望が見えない状況でユーモアに走ったり、どれだけきつい環境でも慣れていく様子が特徴的でした。

    収容所

    見ていると、仲間がひとりまたひとりとまだあたたかい死体にわらわらと近づいた。ひとりは、昼食の残りの泥だらけのじゃがいもをせしめた。もうひとりは、死体の木靴が自分のよりましなことをたしかめて、交換した。三人めは、同じように死者と上着を取り替えた。四人めは、(本物の!)紐を手に入れて喜んだ。

    以前からわたしは、恐ろしい妄想や夢に苦しめられている人を見るに見かねるたちだった。そこで近づいて、悪夢に苦しんでいる哀れな仲間を起こそうとした。その瞬間、自分がしようとしたことに愕然として、揺り起こそうとさしのべた手を即座に引っ込めた。そのとき思い知ったのだ、どんな夢も最悪の夢でさえ、すんでのところで仲間の目を覚まして引き戻そうとした、収容所でわたしたちを取り巻いているこの現実に較べたらまだましだ、と……

    この文は、読んでいて本当に心苦しかったです。悪夢と現実を比べた時に悪夢のがまだマシなんて思ったことは一度もありません。この悪夢で苦しんでいても起こさないという優しさをかけなければいけない状況が悲惨さを物語っています。

    愛は人が人として到達できる究極にして最高のものだ、という真実。今わたしは、人間が詩や思想や信仰をつうじて表明すべきこととしてきた、究極にして最高のことの意味を会得した。愛により、愛のなかへと救われること!人は、この世にもはやなにも残されていなくても、心の奥底で愛する人の面影に思いをこらせば、ほんのいっときにせよ至福の境地になれるということを、わたしは理解したのだ。

    人間の命や人格の尊厳ならどこ吹く風という周囲の雰囲気、人間を意志などもたない絶滅政策のたんなる対象と見なし、この最終目的に先立って肉体的労働力をとことん利用しつす搾取政策を適用してくる周囲の雰囲気、こうした雰囲気の中では、ついにはみずからの自我までが無価値なものに思えてくるのだ。

    数ヵ月後、すでに解放されたあとに、わたしはもとの収容所に残った仲間のひとりと再会した。この男は「収容所警官」をしていたが、収容所最後の日々、死体の山から消えて鍋の中に出現した肉片に手を出したひとりだった……わたしは、あの収容所が地獄と化し、人肉食が始まる直前に、そこを逃れたのだった。

    生きるためには人肉という選択肢がなかったんでしょうか。自分がその立場にいたら、もしいきたいと強く思うのであれば同じ行動を取っていたような気がします。

    すなわち、わたすたちを取り巻くこのすべての苦しみや死には意味があるのか、という問いだ。もしも無意味だとしたら、収容所を生きしのぐことに意味などない。抜け出せるかどうかに意味がある生など、その意味は偶然の僥倖に左右されるわけで、そんな生はもともと生きるに値しないのだから。

    もはや死にさえ意味がなければ辛い思いをしてまで生きるつもりはないということでしょうか。生きるの値しない生。生まれてきた時には全ての生が値するはずですが非常に悲しいですね。

    (暫定的な)ありようがいつ終わるか見通しのつかない人間は、目的をもって生きることができない。普通のありようの人間のように、未来を見すえて存在することができないのだ。そのため内面生活はその構造からがらりと様変わりしてしまう。精神の崩壊現象が始まるのだ。

    ここで必要なのは、生きる意味についての問いを百八十度方向転換することだ。わたしたちが生きることから何を期待するかではなく、むしろひたすら、生きることがわたしたちから何を期待しているかが問題なのだ、ということを学び、絶望している人間に伝えねばならない。哲学用語を使えば、コペルニクス的転回が必要なのであり、もういいかげん、生きることの意味を問うことをやめ、わたしたち自身が問いの前に立っていることを思い知るべきなのだ。生きることは日々、そして時々刻々、問いかけてくる。わたしたちはその問いに答えを迫られている。考えこんだり言辞を弄することによってではなく、ひとえの行動によって、適切な態度によって、正しい答えは出される。生きるとはつまり、生きることの問いに正しく答える義務、生きることが各人に課す課題を果たす義務、時々刻々の要請を充たす義務を引き受けることにほかならない。

    ここに生きるということの本質が綴られていました。生きる意味は自分の行動や態度で見出していくものなのですね。

    自分を待っている仕事や愛する人間にたいする責任を自覚した人間は、生きることから降りられない。まさに、自分が「なぜ」存在するかを知っているので、ほとんどあらゆる「どのように」にも耐えられるのだ。

    わたしたちが過去の充実した生活のなか、豊かな経験の中で実現し心、心の宝物としていることは、なにもだれも奪えないのだ。そして、わたしたちが経験したことだけでなく、わたしたちがなしたことも、わたしたちが苦しんだことも、すべてはいつでも現実の中へと救いあげられている。それらはいつかは過去のものになるのだが、まさに過去のなかで、永遠に保存されるのだ。なぜなら、過去であることも、一種のあることであり、おそらくはもっとも確実なあることなのだ。

    この章は文が多かったのもありますが、かなり引用したい部分がたくさんありました。事柄の本質から悲しい事実まで書かれていました。特に生きるとは?の問いの意味が少し理解できてよかったです。

    解放

    解放された仲間たちが経験したのは、心理学の立場から言えば、強度の離人症だった。すべては非現実で、不確かで、ただの夢のように感じられる。にわかには信じることができないのだ。

    収容所で唯一の心の支えにしていた愛する人がもういない人間は哀れだ。夢にみて憧れの涙を散々流したあの瞬間が今や現実になったのに、思い描いていたのとは違っていた、まるで違っていた人間は哀れだ。町の中心部から路面電車に乗り、何年も心のなかでのみ見つめていたあの家に向かい、呼び鈴のボタンを押す。数え切れないほど夢の中で願いつづけた、まさにそのとおりだ……しかし、ドアを開けてくれるはずの人は開けてくれない。その人は、もう二度とドアを開けない……

    必死に過酷で悲惨な収容所生活を耐えたのに待っていた現実は想像していたものと全く違かった。この文章は人の心に針を刺すような悲しみ溢れたものでした。

     

    本日のまとめ

    何度も言いますが、本当に読んでいて悲しくなる本です。

    ですが、悲しい負の側面が描かれている本だからこそ読むべき価値がある本だと思いました。

    もし、この中である程度の戦争はいいんじゃないかと思う人が1人でもいれば読んでみてください。そこには悲惨な現実しか存在していません。

    僕もこの本に書かれていたように、今後の行動や態度で自分の生きる意味をもっと強く革新的なものにしていきたいと思いました。

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    「読みやすさ」  ★★★☆☆
    「役立ち度」   ★★★★★
    「また読みたい度」★★★★☆
    「コスパ」    ★★★☆☆
    「総合評価」   ★★★︎★︎☆